Exhibitions

 

GALLERY ETHERでは、2021年8月6日(金)から8月27日(金)まで、トロントを拠点に活動するアーティスト、フィ・ラムの新作彫刻作品の個展「TRANSMUTATION」を開催します。

日本での初個展となる「TRANSMUTATION」で、フィ・ラムは、コロナウイルスのパンデミックにより私たちが直面している変化や課題を反映させようと、自身の彫刻作品における視覚的語彙を拡大させています。一見ランダムで混沌とした世界に秩序を作りたいという人間の欲求は残っているようですが、その秩序のもろさが露呈しています。これまで慣れ親しんでいた物事が、今ではまるで新しく未知の物事のように変化してきています。古い秩序の要素は残っていますが、変更され、再構成されています。それは、認識できるものでありながら、同時に異国のものでもあり、世界の秩序の中での自分の位置を再考させ、私たちもまた、この奇妙な新常識の一部に変えられてしまうのです。

展覧会に際し、フィ・ラムは以下のように語っています。

「人生で遭遇する予期せぬ交わりは、いつも私を魅了します。私たちがそれぞれ辿ってきた異なる道が、ある時衝突し、時空を超えた因果関係のある衝撃を与え、それは永続的で不可逆的な影響を与えていきます。直線性は人生にも自然にも存在しませんが、人間の心は一見無秩序な世界に秩序を与えようとします。この一連の木彫作品は、その逆説的な衝動を追求したものです。金属の鋭い直線が自由な木目を貫き、ランダムなものに秩序の閃きをもたらしています。私が木の上で道を切り開いたように、私たちは、暗くてダイナミックな宇宙に明るい道を切り開いて、自らの足跡を残したいと思っています。

このような光の軌跡は、それを生み出そうと必死になっている人たちと同じように無常でもあります。金属の反射性と光の跳ね返りは、一瞬一瞬の無常を表しています。日の光が作品の周りを少しずつ移動すると、暗い木はその光を吸収しますが、金属はその光を集めているかのように、やがて光の全角度を捉えて輝かしく点滅し、再び影になっていきます。」


Artists

フィ・ラム

フィ・ラムは、ペインティング、写真、立体などの媒体で作品を制作しています。現在では、木と金属を組み合わせた立体作品を多く手がけています。以前は10年以上に渡って、写真作品を主に発表していました。今でも、写真やドローイングは、制作プロセスにおいて欠かすことができない重要な要素になっています。近年、精力的に制作している木の立体作品では、木のもつ自然で多様でいながら変わりやすい質感や、物質性を生かし、制作工程などに探求を続けています。金属の光るラインと、火であぶられ黒くなった木の表面が織りなす直線的なフォルムが特徴である立体作品は、家具や照明のプロダクトとしても流通するなど人気が高まっています。

  • Born in Vietnam
  • 1979 Immigrated to Canada
  • 1992 Humber College Photography Program