Exhibitions

 

「MÚDÍ」は、私たちの内側に存在する“天候”──日々変化し続ける感情の気候を可視化する試みです。本展に並ぶ作品群は、異なる文化圏を横断しながら生きてきたアーティスト自身の経験に着想を得ています。移動と定住を繰り返すその人生の中で、彼女は常に自己を再調整しながら、新たな「居場所」を探し続けてきました。

コラージュ、ドローイング、レイヤリング、断裂、そして消去といったプロセスを通じて構築される作品は、断片化と再構築を繰り返すその循環を映し出します。それは、アーティスト自身が「故郷」と呼べる場所を探し続ける終わりなき探求の軌跡でもあります。

中国の墨、アイスランドのウール、旅の途中で集められたリサイクル素材、そして工業用のステープル。東洋と西洋、柔らかさと硬質さ、個人的記憶と無機質な素材が交錯し、そこには解決ではなく“緊張”によって形作られた風景が立ち上がります。本展は、そうした矛盾を身体的に受け止め、地に足をつけるための、作家にとってのカタルシスでもあります。

会場内には、作品へと至る動線として、直線的に張り巡らされた糸が配置されます。鑑賞者はそれらを避けるように空間を進みながら作品に向き合うことになります。その動きは、作品内部に存在するパターンと共鳴し、内面の感情地形をたどるかのような体験へと変換されていきます。

Artists

エイディス・ラグナルスドッティル

エイディス・ラグナルスドッティル(Eirdís Ragnarsdóttir:1993年生まれ)は、アイスランドと中国にルーツを持ち、現在は北京を拠点に活動するアーティストです。アイスランド、中国、日本、ニューヨークといった複数の土地で育った彼女にとって、制作行為は多層的なアイデンティティと向き合うための避難所であり続けてきました。

彼女の作品は、自己という存在が環境に対して異物でありながら、同時にその環境によって形作られていくという弁証法的な経験を表現しています。西洋的な「自己探求」という概念と、東洋思想における「無我」という考え方。その相反する価値観の間に横たわる緊張関係こそが、彼女の作品の核を成しています。

これまでにニューヨーク、サンフランシスコ、北京、上海、ミラノ、パリ、東京などで展示を行い、2024年にはUCCAにより中国を代表する注目の新進アーティストの一人として選出されました。また、Gucciとの展示をはじめ、Arche、Burton、Fujifilmといったブランドとのコラボレーションも精力的に行っています。