いけたくは、グラフィティをルーツに自分や、自分を取り巻く環境に対するフラストレーションをポップに表現している。グロテスクでありながらもポップな作風を意識しており(グロテスクポップ)立体をメインにイラスト、平面作品など、幅広いメディアや表現から「日本人の本音と建前」をテーマに活動している。
Z世代として生まれた彼は、日本社会の不安定な時期を経験する中で、将来に対する不安や自然災害の恐怖を感じている。その透明な恐怖に反発するように、アグレッシブでグロテスクな作品を制作している。それは理不尽な事象に対する反抗精神であり、心の奥で抱える不満や陰鬱とした雰囲気を壊すという内側から湧き出るバイタリティによるものである。
この抑圧された社会に対する不満や怒りを抱えつつも実際に行動へ移すことのない日本人のサイレント・マジョリティに対する皮肉を込め、グロテスクでありながらもどこか可愛くアメリカンポップアートをリスペクトした作風にしており、これは彼がポップアートを建前とし、グロテスクな部分を人の中身(本音)として捉えているからである。
いけたくはSNSの発達や、多様性に対する意識が発展していく中で、発言や対話を臆する人が増えたように感じている。それをデジタルではない立体作品という実存する媒体を使用して鑑賞者との対話を試みたいと彼は願っている。