Exhibitions

 

2000年代初頭から、テクノロジーとインターネットが急速に開花し、2020年にはコロナが流行するのに伴い、社会では孤独の蔓延という目に見えない危機が生まれつつあります。デジタルやSNSに頼りすぎることで、現実にリアルな交流を減少させ、社会的関係の質を低下させ、結果として孤独感を深めています。今年のART TAIPEIにおいて、GALLERY ETHERは、チャン・ジンウェンとネルソン・ホーの2人のアーティストをご紹介し、「孤独」をテーマにした作品群を展示いたします。チャンの作品では、窓や部屋といった日常的なモチーフを用いて、孤独やコロナへの不安など複雑な感情を表現しています。彼女のユニークな視点は、窓を人々にとっての出口であると同時に入口としてとらえ、窓の絵からそれぞれの物語を表し、各自の部屋は記憶や感情が蓄積される空間として機能しています。一方、Z世代として育ったネルソン・ホーは、SNSに影響されたボディ・イメージや男性性の問題に取り組んできました。ネルソンは、社会的差別や圧力の以外に、ゲイのコミュニティーの中でのジャッジから経験した孤独感や苦悩を反映した作品を展示する予定です。

ブース B16でお待ちしております!

Artists

チャン・ジンウェン

チャン・ジンウェンの作品は和紙 、墨 、水干 、岩絵具など材料による無機質な風景を描写し 、現代人の 「孤独 」 、「記憶」、「コロナの不安感」などの感情を伝えたいと思っている。現在、彼女は主に窓と部屋をモチーフにして作品を制作している。

窓の作品を描き始めたきっかけは三木清という作家の言葉に出会ってからであるらしい。 その言葉は「孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間 の「間」にあるのである。」だった。チャンはそこからインスピレーションを得て、東京のマンションと窓のモチーフを用い、作品を制作している。窓は彼女にとって人々の出口と入口を表すものであり、そのひとつひとつの窓にストーリを持ち、それぞれには記憶、孤独、不安などの感情が集まる場所だと考えている。そして毎日、見慣れた景色、教室や部屋の隅などの場所では、人がいなくても、見えない記憶や感情が存在していると考えている。さらに、チャンは空間の閉鎖的な構図を利用して、物語が溢れるような場面を作りたいと思っている。

ネルソン・ホー

マレーシア出身のネルソン・ホーは、2022年に多摩美術大学日本画専攻を卒業。

在学中は、アーティストとしての自分の声を表現するための完璧なツールを見つけるべく、あらゆる種類のメディウムを探求。その中で、古代人がメッセージを伝えたり、当時の事件を記録するために残した壁画に用いた岩絵具を、人類と自然との原初的なつながりのようなものだと捉えた。そして、うつ病やLGBTQに対する差別など、現代社会に渦巻く問題を記録するツールとして岩絵具を使うことができたら面白いのではないかと考えるようになった。

卒業制作では、封筒を使って自分の声を表現。 封筒は言葉の輸送手段であると同時に、非常に個人的で親密なものであり、メッセージを受け取るためには広げて覗き込む必要があるものだからだ。

ホーは、アートは人々を感動させ、新たな疑問を引き起こし、好奇心、興奮、怒りを引き起こすユニークな位置づけであると信じている。それゆえ、ホーの作品はあえて「個人的な」コンテンツを露出させ、人々にそれを覗き見させる。制作にあたり、自身の作品をエンパシーを映し出す鏡として捉え、それがアーティストとオーディエンスの双方に新しい発見とつながりをもたらすことを願っている。